なななのゆるゆる翻訳

自分が翻訳したいと思った歌詞・本だけをゆるく訳してます。

山荷葉 和訳 2.하루의 끝

捕まえることができない、流れていくものが時間だ。

彼と別れたあの夜から時間は休むことなく流れて行ったが、彼の最後の挨拶の言葉は今も彼女の耳元で巡り回っていた。

 

’お元気で。’

 

倦怠感に勝てず男は別れを吐き出した。

2人が共にした最後のその瞬間の言葉が自分のさよならって。彼らしい別れだった。

限りなく自分勝手でありながら限りなくロマンティックな。

 

 

彼と別れた後、女の時間はある時は1日ごとに、ある時は数ヶ月ごとに過去に戻って、男と共にした思い出を1人で歩いた。だけど現実の時間は悲しくも、ある意味当然、退屈な日常の繰り返しから抜け出せなかった。いやかえってもっと忙しく1日1日を過ごしていた。もう昔の恋人になった彼を恋しく思う彼女自身にまるで星が降るように。そして別れと共に5年ぶりにまた訪れた睡眠障害は彼女の日常をより重くしていた。

 

’信じられない。信じられないわ。遅刻なんて。’

 

ガラクタでいっぱいな鞄を持って建物の中に走っていく彼女の後ろ姿から焦燥感が滲み出た。スタジオに入ったら撮影は既に進行中だった。彼女は自分の遅刻を他の人が気づくことができないくらい自然に挨拶をした。

 

”おはようございます!”

 

”はい、おはようございます。”

 

女は短い時間スタッフ何人かと挨拶を交わした後、スタジオ後方のテーブルに席を取って座りコーヒー一杯で心を鎮めた。

彼女は記者で、今日はちょうどカムバックを控えた歌手とのインタビューがある日だった。

 

’質問用紙はここにあって…録音機も…あって…何も忘れ物はないよね?’

 

インタビューのためテーブルの上で細かくセッティングする女。慌ただしく出た日にしては1日の始まりが無事だった。

 

”お疲れ様でした。”

 

撮影が終わったのか今日の主人公がスタッフたちと挨拶を交わしていた。

すぐ彼女の順番が始まるのだ。

 

”こんにちは。撮影する姿よく見させてもらいました。インタビューもよろしくお願いします。”

 

”はい、よろしくお願いします。”

 

彼は明るく笑っていた。

 

”それでは始めましょうか?”

 

彼女はノートと録音機をつけてじっくり質問を始めた。

新しいアルバムを発表した歌手は重厚な姿勢でインタビューに臨んだ。自分が作り出した創作品に対して愛情と情熱があふれる彼の姿から、彼女は誰かが見えるようだった。アルバムの話を十分に交わした後、彼女はテーマをつけて彼の日常を尋ねることにした。

 

”みえみえな質問のように聞こえるかもしれませんが、スケジュールが終わったら主に何をしますか?”

 

”どうでしょう。平凡だけど大丈夫ですか?”

 

”はい、なんでもいいです。”

 

”うーん…一旦家の暗証番号を押してドアを開けたら、尻尾が取れるほど歓迎するルーがいるでしょう。”

 

”ルーですか?”

 

”あ、ペットです。家族ですよ。ダックスフンド。愛嬌が多いやつです。ルーじゃなくてもしばしば姉や母が起きているけど、ラジオを終えて家に帰ると夜明けの2時半くらいで普通はみんな寝ています。”

 

彼は手の動作が大きく、落ち着いているが豊富な表情で1日の終わりが思い浮かぶように話した。

 

”子犬だけだと、少し悲しいのでは?”

 

彼女もいたずらをするようにもう少し雰囲気をよくする質問を続けていった。

 

”はは、そうかもしれませんね。それでも大丈夫です。僕を歓迎するものはまだしばらく残っているから。”

 

”他に何がありますか?”

 

”家に到着したら怠くて一旦ベッドに横になります。横になる僕の姿が遊ぼうっていう表現だと思っているのか、ルーはいつも僕の背中に乗ってきます。マッサージするように肩と背中を踏みます。あれほどのマッサージ師もいないと思います。そしてアロマキャンドルをつけて、蓄音機の真空管予熱のために電源をあげます。”

 

彼女のタイピングが速くなった。

 

アロマキャンドル真空管予熱とは…高尚な趣味ですね。”

 

”どうでしょう。暗くて暖かい感じがするのがいいんです。僕にとってアロマキャンドルをつけて蓄音機を予熱することは’今日1日も終わった’という露骨な意識です。”

 

”そして音楽を聴いたら1日が終わられるんですか?”

 

”いいえ。洗わなきゃ。先にシャワーを浴びます。半身浴が好きなんですよ。インターネットで死海塩入浴剤というのを大量購入したんですが、どうやら詐欺にあったようです。とにかく真空管予熱の時間と浴槽に水を溜める時間が素晴らしいほどぴったり当てはまります。”

 

子犬、アロマキャンドル、蓄音機そして半身浴とは。彼女は彼がもしかしたらロマンティストなのかもしれないと思った。すると再び誰かが思い出されて暫く言葉が続かなかった。

 

アロマキャンドルに蓄音機に死海塩半身浴に…もしかして浴槽に薔薇をまくことはないでしょう?”

 

彼女はぎこちない笑みを浮かべていたずらに言った。

 

”はは、説明を一つ一つして必要以上に感じられていたけど実際とても日常的なことです。本当に高尚なふりちょっとしてみましょうか?アナログ蓄音機には昔の音楽がいいんです。ジュリー・ロンドンジェームス・ブラウン、トニー・ハサウェイのような親切な、おしゃれな人の音楽。”

 

彼女はもう一度そっと笑った。男の話し方と表現法が可愛いと思った。

 

”半身浴をしながらどんなことを考えますか?”

 

”うーん…寂しいって思います。時間が2時半をはるかに超えているのを見ると、誰かと話すのにも遅くて声をかけるのにも申し訳ない時間なんですよ。”

 

女はそんな彼が少し痛ましく感じられた。

 

”スーパースターの悲哀のようなものでしょうか?”

 

”はは、質問にポイントが二つズレました。僕はスーパースターでもなく、僕にとって寂しさは悲哀ではありません。かえって僕は寂しさを楽しむ方です。”

 

”寂しさを楽しむ?”

 

彼女はタイピングをしているためモニターに視線を固定したまま話を続けていき、男の視線もやはり遠いところを向いていた。

 

”寂しさというのは、癒されると消える簡単なものではないと見ています。ただ人生のように歩く影のようなものでしょう。それでもたまには僕を軽く叩いてくれる何かが必要なのに、僕は先に申し上げたことが僕をきちんと抱きしめてくれているために、健康に寂しくなっているところです。”

 

はっきりした答えに彼女はタイピングを止めて彼を見つめて、目が合った。

 

揺れることなく確信に満ちた瞳。しきりに誰かの顔が彼に重なって見えた。

だからだろうか?彼らにとって寂しさとは一体何なのかもう少し知りたくなった。

 

”健康な寂しさとは。面白い表現ですね。”

 

”そうですか?僕はそんなものが必要だと思います。他の人は理解できない僕だけの慰め方。ある日は寂しくてある日は疲れてまたある日は自らがとてもバカみたいで情けなくなることもあるでしょう。もちろん楽しい日も多いですけどね。重要なのは生きていく日々は終わりが見えないくらいに長く伸びているのに、どんな感情でも中和してくれる何かがなければならないということです。嬉しい日でも悲しい日でも僕はそれらを欠かしません。複雑な感情が落ち着いて沈みながら1日のコンディショングラフがある程度平均値に戻ってくるんです。劇的なことは好きだけど、始まりと終わりは中間がいいでしょう。記者さんも何でもいいです。僕のように複雑でなくてもいいです。どんな方法でも毎日似たように1日を整理して終わらせたら心が楽です。”

 

彼女はしばらく考えなくてはならなかった。

彼が質問に誠実に答えてくれたために、その重さに合う質問を返してあげたかったからだ。こんな時はお互いの位置を計算せずに、ただ忠実に会話を交わしたらいいということを長い経験からわかっていた。彼女は自分の話をしようとした。

 

”感情を中和させる何かが必要だという言葉に共感します。私のような人々のために歌を一つ推薦してください。寂しくて疲れてまたある日は自らがバカみたいで情けないと感じる日、そんな日に聴くのにいい曲で。”

 

”寂しくて疲れて辛い時か…そうですね、この曲がいいですね。今日交わした話にも通じています。僕の歌の中に’1日の終わり’というのがあるんですが、それを聴いてみてください。誰かがこの曲で1日を終わらせてくれたら本当に胸いっぱいになるようです。”

 

男の推薦曲を最後にインタビューは終えられたが、彼女は彼がより気になった。記者という名前で数多くの人と会ったが、個人的に好奇心が湧くインタビューはあまりなかった彼女だった。その男は話をすればするほどもっと知りたくなる不思議な人のようだった。

 

撮影現場の近くのカフェでインタビューの原稿整理を終えた女は0時が過ぎて家に帰って来た。睡眠障害という別れの後遺症を全身で耐えている肉体はただ倒れるのを望んだ。疲れた体をベッドに横たわり呆然として天井を見つめた彼女は、ふと男の言葉が浮かんだ。

 

’ある日は寂しくてある日は疲れてまたある日は自らがバカみたいで情けなくこともあるでしょう。’

 

まさに彼女の話のようだった。

 ご飯を食べたり散歩をする時、そして面白い話や悔しかったことに一緒に笑ってくれたり怒ってくれる人がそばにいなかった事実に女は寂しかった。またある時は捕まえたふりもできなくて、愛していた彼をただ送ってしまった自分があまりにもバカみたいで情けなかった。1日に何回も感情の波を乗り越えて疲れていた女だった。

 

’どんな感情でも中和してくれる何かがなければならないということです。どんな方法でも毎日似たような1日を整理して終わらせたら心が楽です。’

 

男の言葉のように彼女は複雑に絡んでいる自分の感情を中和させる必要があった。

 

女は疲れた体を起こして、いつかプレゼントでもらったアロマキャンドルを引き出しの片隅から取り出し、普段は忙しく見向きもしなかった浴槽に水を入れた。水を入れる間しばらく浴槽に腰をかけた彼女はマッサージしてくれる子犬も人もいなかったので、自らふくらはぎを揉んでにっこり笑った。

 

’蓄音機もないんだけど。’

 

しばらく悩んでそれがなんだというように携帯で歌を探した。

 

’1日の終わり…見つけた。’

 

今日会った彼が推薦した歌を聴いて、浴室内に彼の声とピアノの音がいっぱいに鳴り響いた。なぜか1人ではない気分になった。彼女はゆったりした仕草でシャワーガウンを脱ぎながらお湯の温度をチェックした。

 

暖かいけど少し熱い温度。

しばらく躊躇っていた彼女は足先からゆっくり浴槽に浸かった。