なななのゆるゆる翻訳

自分が翻訳したいと思った歌詞・本だけをゆるく訳してます。

山荷葉 和訳 6.상사병

男は作家だ。

有名ではないが、自分だけのはっきりとした世界と熱い情熱を抱いている若い作家。

しかし普通の芸術家たちがそうであるように男も1日に数百回、数千回ずつ極と極の感情の起伏を経験して、最近はペンを置こうか考えるほどに疲れていた。実際感情の高低差は人生で経験してきたから慣れたことで、何年もの間これといった満足な文を書けなかったことが男が隠しておいた疲れた理由だった。彼は限りなく低くなった自信感と、終わりなく湧き上がって行く自己嫌悪に苦しんでいた。

 

そんな男にとって家は安定と真の憩いの場でなければならなかったが、それさえも圧迫と挫折の沼に変わってから長く経った。長い低迷期に陥っていっぱいいっぱいになった男は、結局現実からの逃避を選んだ。自分の家から一番遠く離れているところ、地球の反対側に存在する国へ。出発する前長い間離れるダンにごめんねの散歩に出た運命のような彼女と出会って、その日から2人は短い期間の間で長い時間を共にした。そしてこれまでのスランプを嘲笑うかのように男は素敵な文章を書き始めた。彼女は祝福だった。

 

”好きです。僕あなたが好きです。”

 

男と女が3回目に会った日のことだった。短気で下手な彼の告白。

 

”…本当ですか?私を好きだって?私たちまだお互いに対してよく知らないじゃないですか。”

 

男は彼女に一目で惚れてしまって、先に恋に落ちた。

早急な決定を下す人々が通例通り、男は自分の感情にどっぷり酔っていた。相手の気持ちより自分の感情だけを前面に出してしまうことほど致命的な失敗が他にあるだろうか。子供っぽい男の告白を女は拒絶して、ぼんやりとした彼は傷を負った。しかしそんな風に彼女を手放してしまうには男の心は既に深くなっていた。

 

失敗を挽回するため徐々に彼女に近づいて誤解を解いていった刹那、男にまた他の試練が出くわした。現実逃避のため選択した旅行の出国の日が近づいてきたことだ。まだ彼女の心を掴めていないのに、人間が物理的に離れることができる一番遠い街に発たなければならない現実が男には何より過酷で、チケットを切った自らを咎めた。彼は旅行をキャンセルしようかとも考えたが同じ失敗を繰り返したくなかった。自分の気持ちに対して深く考える時間を持つと決心した。1人だけの時間を持った後にも今と同じ気持ちなら、その時また告白しようと。1人で南米に向かう飛行機に上がった男は、心の奥まったところに向かって尋ねた。

 

’彼女の言うように僕がもしかして錯覚しているのか?ひとりでとても先に行っていたのか?それとも疲れていて誰でも愛する人を探しているのか?’

 

暫く返事がなかった心はそれは愛だと、今全身に広がってしまった彼女に対する欲と恋しさ、探究心は明らかな愛だと返事してくれた。

 

”愛…”

 

彼は小さな声で言った。

そして愛という単語がこんなに綺麗な発音を持つ単語だと人生で初めて知った。

男は何度も愛という単語を振り返ってみて、いつ深刻になったのかというようににこりと笑って毛布をかぶった。

 

’寝なきゃ。寝たらそのぶん時間は早く流れるだろう?’

 

男は遠足の日が早く来るように願う子供の気持ちで、早く時間が流れるように願いながら寝た。その遠足の到着地は彼が今向かっている地球の反対側ではなかった。皮肉にもあれほど抜け出したかったところ。彼の家、彼の町、彼の国だった。男にとって挫折の沼に過ぎなかったその場所が、彼女と出会ってから楽しさとときめきがある遊園地に変わったから。

 

そこには彼女がいたから。

 

男はうるさい飛行音にイヤホンで耳を塞いで目を閉じた。